妻、やめます。

モラハラ夫と過ごした日々の回想録

モラハラ夫による身体的暴力~私の夫の場合

跡が残らない暴力は暴力にあらず?


 モラハラをする人は身体的暴力はしないという記述をよく見ます。

たしかに夫は、
日常的に殴る蹴るという暴力はありませんでした。

しかし、
私たち夫婦の中でしか通用しないルールの上での夫の身体的暴力がありました。


今回は、モラハラ夫の身体的暴力についてのおはなしです。

夫が唱えた恐ろしい呪文


まだ新婚の頃、
けんかが高じて激しい言い争いになりました。

もちろん相手はモラハラ夫なので、けんかのベクトルが噛み合いません。

 

話し合いたい私。
絶対に向き合いたくない夫。

 

この頃すでに、モラハラ夫特有の〝論点のすり替え〟〝揚げ足取り〟〝責任転嫁〟などに苛まれており、この時も、私は夫の卑怯なやり方に流されないよう必死に食らいついていました。


非情で人でなしな夫の言動・態度


私の感情は決壊し、
汚く泣き崩れ、醜い大声で夫に言葉と感情を吐き出しました。


「お前がそれ以上一言でも口開いたら出て行くからな」

「学校行くわ」


夫がよく使う常套手段です。

私が出て行ってほしくないのを知っているのです。

※学校は自転車で数分の距離にありました。
夫はよく、誰もいない夜中に仕事しにいったり、こうして、学校へ逃げようとしました。


「お願いだから行かないで!」

「ちゃんと話をして」


私は夫の腕を掴んだり、体を抑えたりしました。


夫は、私を力ずくで乱暴に引き剥がし、そのまま床や壁に倒したり、つき飛ばしたりしました。

そしてまた私は何度も立ち上がり、着替える夫を引き留めては倒されて、のくり返しでした。


そのうちに、夫が私の両腕をものすごい力で掴んできました。

指の圧がすごく、痛みで腕に力が入りませんでした。



夫が手を離すと、私の腕に真っ赤な指の跡が残っていました。


その時は特に感情がなく、
私はただ、腕をぼんやり見ていました。


夫は私の腕に気づくと、目の前に恐ろしい顔を近づけてきました。

そして、
低く振り絞るような声でゆっくりと、このようなことを言いました。



「いいな。これは暴力じゃないからな。


 俺は暴力は振るわないよ。
 
 暴力は後が残るからね。


 だからこれは暴力じゃない。

 お前がそうさせた。正当防衛だ。

 いいか、だから誰にも言うなよ」

 


夫の威圧的で恐ろしい呪文のような言葉。


私は恐怖で何も言えず、
すっかり夫の空気にのまれてしまいました。


この時の夫を、今も忘れられません。
胸が苦しいです。



「お前のせいだ」

「もう無理。やっていけない」

 

と、夫は続けます。


私は絶望に追いやられ、

ひたすら夫に許しを請いました。


少しでも謝罪以外の言葉を発すると、また「出て行く」と言いました。


私を黙らせると、夫はさっさと布団に入って寝てしまいました。

 


私はずっと、この日のことを誰にも言いませんでした。

しばらく痣が消えなかったので、
袖の長い服を選び、なるべく身近な人に会いませんでした。


なぜなら、私が悪いからです。


私のせい。
私がちゃんとしないから。
私が醜い姿で夫を困らせたから。


それに、

誰かに言ったら、夫に嫌われる。



私は夫からの身体的暴力を否定・批判できなくなりました。

 

その後にあった身体的暴力

布団の上でビンタ

ふたりとも布団の上に座っていました。
私は正座でした。

口論の発端は覚えていません。


やり取りの途中で夫が激昂し、思い切り私の顔をビンタ。


私はビンタの勢いで身体が壁際の家具に打ちつけられました。


それが直接の原因だとは言い切れませんが、それから数日、耳が聞こえづらくなったり、後から軽い頭痛が起こりました。。


私は夫を責めるわけではなく、
ただ、無感情で症状を伝えていました。

私の様子にまずいと思ったのか、翌日は珍しく勤務中の夫からメールがきました。

内容は
謝罪と体調の心配、病院に行ってください、というもの。


そして、

〝今日は1日頭を冷やすので 今日は家にいてください〟

とありました。


私は家にいました。
家を出て行くことは考えられませんでした。


どこかに泊まれるお金などない。
実家に帰ったら終わりだ。

 

何より、
私は夫と向き合いたいだけなのです。

夫が無事に帰って来てくれるならそれでいいと思いました。


その翌日ぐらいに頭痛がはじまった私。
また勤務中に夫からメールがきました。


夫は心配してくれていました。


でも、そのとき私は、
逆に夫に申し訳ないという感情が生まれていました。

私は自分の痛みよりも、夫のことを気遣う内容を送っていました。


夫にこれ以上、重い気持ちを背負わせたくない。

一緒にいて、
つまらない気持ちを伴う妻だと思われたくない。


夫は欲望に弱い人。

面倒な空気が続いてしまうと、楽で心地よいところへ行ってしまうのではないかと不安に陥りました。


恥ずかしいことですが、
私の心の半分は囚われていて、共依存になっていました。

 

不意打ちの蹴り

この時も、先に書いたような口論からの〝出て行く、出て行かないで〟のやり取りでした。

私は心も身体もぐったりしてしまい、布団の上にへたりこんでいました。


しばらくして背後からどすどすと足音が聞こえると思った瞬間、突然、背中を踏み蹴られました。


私はその衝撃で背中が反り返り、上半身ごと前にばったりと倒れこみました。


一瞬、呼吸が苦しくなりましたが無傷でした。

夫の顔はものすごく恐ろしい形相。

私は怖くて何も言えませんでした。

 

夫の実家で

冬。夫の実家に帰省中。

夜中、私と夫は居間にいました。


実家に帰省中はいつも夫や夫家族のことで悲しい思いをするので、そのつらい胸の内を夫に伝えていました。

しかし、

夫は私の気持ちを受け止めるどころか怒り出し、一方的に理不尽に責めてきました。


そのやりとりの途中。
夫は一瞬黙って私を睨みつけると、思い切りビンタしました。


お互い立ったまま話していたので、
ビンタされた私はその勢いで身体が吹っ飛び、畳の上に落ちて倒れ込みました。


このときの私は、身体が痛いという感覚はありましたが、そんなことよりも夫の家族に見られたくないという気持ちが先立ちました。


咄嗟に身体を起こし、立ち上がり、夫を置いて急いで部屋に帰りました。


部屋に帰ってから感情がついてきて大泣きしました。


怖い、悲しいという感情もありましたが、それよりも心に湧き上がったのは

 

〝これが夫の家族に知れたら、私は追い出されてしまう〟


と、いうことでした。


不安と恐怖が心を支配しました。


その後、部屋に戻ってきた夫は私に何も言わずにばたんばたんと不機嫌な音をさせながら眠ってしまいました。


この時も、私は夫の暴力を一切責められませんでした。


夫を怒らせてしまった自身の言葉をひたすら謝罪しました。

 

潰された心。破壊された理性。


ここまで夫の暴力をあげてきましたが、
実は、私も夫に手をあげてしまっていました。


夫をビンタしたり
たたいてしまったり

物にあたることも何度もありました。


泣きじゃくり、大声で怒鳴りました。

 


夫はそんな私を容赦なく責めました。


〝暴力だ!〟と騒ぎ、

〝最低な人間〟と蔑み、


思い切り目を見開いて上から罵倒しました。

 


口論の発端はこんなはずじゃないのに、
最後は大抵、心をめちゃくちゃにされてゴミのように扱われる。


私は最低な人間。

私はおかしい。
私は病気かもしれない。


今まで知らない自分。
どうしようもない自分。


恥ずかしい。情けない。


自責の念、自己嫌悪に酷く苛まれ、悩み苦しみました。

 

心を取り戻してくださった相談員さん


私は、自身の恥ずかしい話を女性センターの相談員さんに正直に打ち明けました。


夫の言葉や態度に、
どうしても衝動的に心と身体が反応してしまうこと。

人に見せられないような醜い自分になってしまうこと。

あんなに後悔するのに、正しくありたいのに、何度も同じ過ちを犯してしまったこと。



〝自分の方が夫よりも酷い人間なのではないか〟

 


相談員さんはすぐに答えをくれました。

 

〝それがモラハラの手口なのだ〟と。


モラハラ加害者はあえて、被害者が心を痛め苦しむようなことを言って追い詰める。


被害者をあおり、取り乱したところをさらに攻撃して弱らせる。


だから、被害者が加害者の酷い言葉や態度に反応して衝動的になってしまったことは、おかしいことじゃない。



それだけ被害者が、加害者と真摯に向き合おうと頑張っていたということ。

自分を責めてはいけない、と。



私はたくさん涙を流しました。

相談員さんに出会わなかったら、
私は今も自責の念に苦しみ続けていたと思います。


自分のなかに溜め込んできた苦しみ、嘆きを受け止めていただき、心を洗い流してくれたことに心から感謝しております。


しかし、
私が夫にしてしまったことは受け身で衝動的であったとしても、なかったことにはできません。

暴力を肯定することはできません。


自身の心の弱さのせいで、正しく自分を導けなかったことは、これからも反省と改善をしていきたいと思っています。

 

モラハラ夫の勝手な暴力ルール


夫は目に見える分かりやすい身体的暴力でさえも、堂々と悪びれることがありませんでした。


恐怖の支配で私にその罪を押し付けました。

 

知能犯のモラハラ夫の身体的暴力は、衝動的な行為に見えて、実は陰湿で計算高いモラハラ夫の特徴が色濃く反映されたものでした。


立場の弱い妻に独自の理論を突きつけ、自らの身体的暴力を正当化。



夫にとって身体的暴力は、

自身の首を絞めるものではなく、私を支配するのに有効な手段のひとつでした。

 

身体的暴力を振るわないのではなく、

振るったとしても、精神的暴力を駆使して身体的暴力と認識させない。

これが夫の暴力ルールでした。

www.nanairo-r.com

 

www.nanairo-r.com